副業が制限されている公務員や教員は、ブログで収入を得られるのでしょうか?公務員の副業について、懲戒処分や過去のケースを参考に検討します。また、公務員に認められている副業の種類を紹介するので、今後の参考にしましょう。
公務員の副業におけるポイント
公務員の働き方にはさまざまな制約があり、副業が制限されていることもその一つです。特定の企業や個人との癒着を防ぐための副業の制約は、どのような観点から決められているのでしょうか?
職務への専念
公務員の給与は『税金』で支払われています。そのため『職務に専念すること』が強く求められるのです。
仮に、副業に取り組むと、帰宅後に深夜まで作業をしたり休みなく働いたり、という状態が続くかもしれません。
「副業が原因で疲労が取れず、仕事中にミスが増えるようでは困る」との危惧から作られた規制です。副業に制限が課されているのは『定められた仕事が滞りなくできるようにするため』と言えます。
利害関係や情報管理
特定の企業や個人との結びつきによって『癒着』が生じたり『情報漏洩』を防いだりするのも、副業が制限されている理由です。
公務員はさまざまなデータを扱います。個人情報はもちろん、担当する仕事や役職によっては『機密事項』や『入札に関する情報』を管理しているケースもあるのです。
個人情報の漏洩が大きなニュースとしてたびたび取り上げられている昨今、公務員の情報流出も決して許されることではないでしょう。ましてや、仮にそれが悪用されたとなると大問題です。
漏洩した情報によっては、犯罪につながることもあります。そのような深刻な事態を防ぐため、副業が制限されているのです。
信用の確保
公務員や教員は、国や地方自治体、学校の代表にあたる職種です。そのような責任のある立場の人がするには『不適当』な副業もあるでしょう。
例えば、「昼間は生徒指導をしている教員が、夜は副業として風俗店で働いていた」というケースはどのように感じるでしょうか。
教員本人に対する『信頼性』はもちろんのこと、学校そのものに対しても不信感を抱く人も少なからずいるはずです。一教員の副業によって学校全体の信用が揺らいでしまいます。
副業を制限することで『信用がおとしめられる事態を予防』しているのです。
副業発覚時の懲戒例
公務員や教員は、副業がばれると『懲戒』を受けます。『どのような懲戒があるのか』や『どういったケースで適用されているのか』など、懲戒の種類や実際にあった一例を紹介しましょう。
懲戒の種類
副業が発覚したときの懲戒処分には、段階があります。
最も軽いのが『訓告』です。上司から注意を受けることで、厳密にいうと懲戒処分ではないものの『部署移動』などの制裁を与えられる場合もあります。
『戒告』は『人事記録に残る』ので、その後の評価に影響し続ける懲戒処分です。昇給や賞与はもちろん、出世にも影響します。
『減給』は『最大6カ月給与を減らされる』処分です。副業の収入が少額かつ一時的の場合に適用されます。
長い間、副業で多額の収入を得ていた場合にくだされるのが『定職』処分です。最大6カ月、仕事ができないうえに給与も受け取れません。
副業中に犯罪をしてしまったというケースでのみ適用されるのが『免職』です。公務員の資格を『はく奪』されます。
発覚理由や例
公務員の副業が発覚する主な理由は、納税額の増加・税務署からされる無申告の指摘・密告などです。
過去には『テレビ出演』や『児童手当を申請するときの課税証明書』で判明した例があります。
また、上司の承認を得られれば可能な副業にあたる『農業や不動産を承認なしで運用』していることが明るみとなり、停職や減給になったケースもあるのです。
教員でも可能な副業とは
公務員や教員の副業は制限があります。しかし『条件を満たせばできる副業』もあります。
届け出をして上司の承認を受けたうえで、公務に支障をきたしたり信頼を損なったりしないものなら、公務員や教員でも副業が可能です。
公益活動
2017年頃から認められている副業が『公益活動』です。有償ボランティア・サッカーや野球のコーチ・教育が目的の子ども向け講義、などが該当します。
ただし、すべての自治体で認められているわけではない点に注意しましょう。加えて、公益活動による副業ができる自治体であっても『上司の承認は必須』です。
「有償ボランティアに参加したい」「少年野球のコーチの誘いを受け挑戦したい」という場合には、まず上司に相談しましょう。
執筆業
表現の自由が尊重されている現代において趣味の一環として楽しめる『執筆業』は、公務員にも許可されやすい副業です。
確定申告の必要がない20万円未満の収入なら『副業ではなく趣味の範囲』とされる場合がほとんどと言えます。
電子書籍の制作や同人誌・ブログの執筆、そのほかの創作活動など、さまざまな活動が可能です。
ただし、電子書籍や同人誌の中に、情報漏洩や政治的に偏った意見が含まれる場合には認められません。公務員としてふさわしくない発言にあたるからです。
不動産などの投資
不動産は小規模であれば、精神的・肉体的な負担がそれほど大きくならない範囲で実行できる事業です。特定の企業や個人と利害関係が発生することもないでしょう。
そのため、公務員の副業として承認されるケースが多くなっています。ただし、規模が大きかったり、条件を満たさなかったりする場合には認められないので注意しましょう。
公務員の副業として認められるのは『5棟未満の賃貸物件』や『10室未満の区分所有・10台未満の駐車場』かつ『年間収入が500万円に満たない範囲』です。
また、『賃貸管理業務はすべて管理会社へ委託』する必要があります。
これらの条件を満たしている場合でも、本職の公務員で担っている仕事が『不動産投資と関わりのあるもの』である場合、認められません。
ブログで収入を得ることは可能か
公務員や教員もブログで収入を得ることは可能です。ただし、正しく届け出や申告をすることが何よりも大切になります。
隠しながらブログ運営をしていると、懲戒処分の対象になってしまう可能性も否めません。
自営兼業承認申請書の提出
『アフィリエイト』や『アドセンス』など、ブログに広告を掲載することは副業になります。そのため、収入目的のブログ運営を始める場合には『自営兼業承認申請書』を提出しましょう。
申請書には、事業内容や収入の見込み額・ブログ運営をする時間数や、利害関係の有無・公務員としての仕事への支障の有無などを記入します。
記入が完了したら『申請書に記入した内容を証明する書類』とあわせて提出しましょう。
副業の承認について『裁量権のほとんどは上司』にあります。そのため、実際に申請書を提出する前に、上司に1度相談しておくとよいでしょう。
名義を別にするリスク
「ブログでの副業は、名義を自分以外の家族の誰かにしておけば大丈夫」と考えるかもしれません。しかし、実際には大きなリスクを伴う方法です。
仮に『配偶者名義でブログを運営』した場合、収益が発生すると配偶者に住民税や所得税の納付義務が発生したり、社会保険への加入が必要になったりします。
結果的に得た収益は減ってしまうでしょう。
また、『配偶者ではなく公務員本人が運営している』ということが明らかになるリスクもあります。副業を隠しているのがばれてしまうと懲戒処分の対象となり、その代償は退職時まで続くのです。
特に『税務調査』は、ブログ運営が配偶者ではなく本人によるものとばれる原因になり得ます。隠そうとするのではなく『承認を受けて、認められる範囲内でブログを運営する』とよいでしょう。
まとめ
公務員や教員は副業に制限があります。しかし、『自営兼業承認申請書』を提出すれば、ブログで収入を得ることが可能です。
名義を配偶者にするなど、副業を隠していると、懲戒処分の対象になってしまいます。事前に承認を得てから副業に取り組みましょう。
きちんと申請して認められる範囲内であれば、公務員でもブログを副業にできます。